ふぉとの輪

写真を通してあなたとつながる

みかんのカメラ

息子が

『みかん!みかんがいる!!』

と言ってくるので、みかんを渡す。

 

しかし、

『ちーがーう!これじゃない!!』

と怒ってくる。

 

なんだ?

なにが望みなんだ?

何を求めているんだ?

 

息子は相変わらず

『みかん!!みかんがいるぅ!!』

の一点張り。

 

…分からない。

3歳の息子の気持ちがすでに分からない。

 

そのことが父親として、情けなくて不甲斐なくて…。

オレはいつのまにか息子の気持ちも分からない父親になってしまっていたのか…。

泣きたくなる衝動を必死に堪える。

 

改めて息子を見つめる。

大きくなったなぁ。

そういえば最近、言葉も増えてきた。

生意気なことも言うようになった。

 

こうやって大きくなっていくんだなぁ。

成長してるんだなぁ。

気持ちが分からなくなることも仕方ないのかなぁ。

そんな気持ちも出てくる。

 

そうやって、感慨にふけっていると息子が怒って詰め寄ってくる。

『パパ!!早くっ!!』

『みーかーん!!』

『みーかーんのかーめーら!!』

 

だから、みかん渡してるじゃ…ん??

??

??

??かめら??

 

みかんのカメラ??

 

ぼくの思考はここからフル回転。

わずか0.01秒でその答えを導き出す。

 

そうか。

そうだったのか。

謎は全て解けた! 

 

その謎が解けた時。

ぼくはなんとも言えない幸せな気持ちで満たされる。

『あぁ…。やっぱりこの子はぼくの子だ。』

 

ニコニコ笑顔のぼくは、息子にそれを手渡す。

その瞬間息子も満面の笑顔だ。

 

まるで、

『そうそう。これだよこれ。パパ、分かってんじゃん。』

とでも言いたげだ。

 

彼はそれを手に持ち、気持ちよくシャッターを切っている。

『パパー!!みかんのカメラ!みかんのカメラ!!』

 

ぼくはそれを聞いて言い返す。

『そうだねー。ニコンのカメラね。』

『息子くんみかんのカメラ大好き!

『そっかぁ。じゃあまずは、早くニコンって言えるようになろうね。』

 

息子よ。

君がもう少し大きくなって、ニコンと言えるようになった時。

そして、その手でカメラを持ち、シャッターを切れるようになった時。

一緒に撮影に行こう。

そのみかんのカメラを持って。

 

父はソニーを持っていくがな。

 

完。

f:id:photo-no-wa:20190519150332j:plain